4種の「バガヴァッドギーター」

写真は手許にある4つの『バガヴァッドギーター』本で,右から入手の新しい順に並べてみた。右端が佐藤裕之訳の新刊で,一番取っ付きやすそうにみえる。次が岩波文庫の上村勝彦訳で,一番学問的だ(何しろ訳注が半分を占める)。ご存知のように「ギーター」は浩瀚な叙事詩『マハーバーラタ』の中の一挿話に過ぎない。上村先生はその「個人全訳」を始められたのだが,残念なことにその途上で病気のため逝去されてしまった。とりわけ薄い最後の第8巻が無念を物語っている。次の鎧淳訳がじつは最初に読んだ「ギーター」だった。


一番左の『Bhagavad Gita As It Is』は滞米中のキャンパスで Swami Prabhupada 教団が無料配布していたものだ。「ギーター」の英訳だが,本文中に教団による「注釈」がこれでもかと挿入されていて(笑)全く読まなかった。じつは,滞米中の気晴らしに H. ヘッセと R. ロランを持ち込んでいたのだが,後者のそれが「ラーマクリシュナとヴィヴェーカーナンダ」本だったので,若干の素地はあったともいえる(笑)。カルト宗教の世界的流行期で,その頃の日本にも「オウム真理教」が生まれていた。R.オッペンハイマーが最初の原爆実験の後に,何度かのインタビューに答えて『ギーター』の一節を引用したことは有名だが,かなりキザな行為だし自己正当化も見え隠れするので,彼を嫌いになった人も多いと聞く。

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