気の滅入ることが最近あったのだがそれはここでは書かない。他にもブログネタが出来しているのでそれを書こう。

１）少し前から「算術幾何平均」について妄想を膨らませて計算を試みてきたのだが，そのうちの一つの妄想が実現した。結果は全く算術でも幾何でもないのだが，とにかくガウスのそれを「３変数の漸化式」に拡張するのに成功したのだ。本家 arXiv の 2406.13077 がそれである（著者名 sogo で検索すると近作が３つヒットする）。

２）渡邉慧先生の戦前の論文（岩波の雑誌「科学」に掲載）を読みたくなり国会図書館へ行ってきた。学生の頃に一度行ったことがあるが大きく様変わりしていて驚いた。事前に確かめてあったのだけど，設置されてある端末だとうまく出て来ない。質問すると館員がとても親切に教えてくれ，２時間弱の滞在で当初の目的を果たすことが出来た。あとで岩波の編集者に聞くと，岩波には創刊号から残っているという；空襲を免れたらしい。

３）W. パウリ先生に興味が湧いて，最後のお弟子である C.P. エンツさんによる伝記「No Time to be Brief」を入手して読んでいる。表題は「簡潔に述べるには時間が足りない」と反語的に訳すのが適当であろう。知らなかった情報が満載で，なかなか重たい読書を体験中である。つい読みたい論文が出て来るが Springer の壁に阻まれてアクセスできないのは不愉快だ。それでもいろいろ面白い関連論文が見つかるのは嬉しい。

余談ながら，写真は板書中のパウリ先生で『物理と認識』（講談社）の表紙にも使われている有名なものだ。けれど，書かれているマクスウェル方程式が間違っていることを，つい最近になって気付いた：２行目は rot H-\dot{E} = i が正しい。見難いが，隣りの式も E が H の間違いのようだ；あるいは３行目の書きかけが H の間違いかも。気付いたのは「対称性」感覚のおかげである。マクスウェル方程式は以前なら覚えていたが，確かめるために教科書を探したのはご愛嬌である。

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