2025.03.07 02:18agreement to disagree表題は「互いに意見が異なることに同意する」という意味で,最近知った R.S. Fritzius による論説 (1990) のタイトルから取った。それは「電磁気学の不可逆性」をめぐってリッツとアインシュタインの間で Physikalische Zeitschrift 誌で交わされた...
2024.07.20 00:00Satosi Watanabe's Doctor Thesis前回記事に書いた国会図書館訪問の目的のもう一つは,渡邉慧先生の学位論文(仏語)のコピーを入手するためであった。そのときは関西館にあることがわかったので「遠隔地複写」を依頼して帰ったのだが,しばらく待っていると「資料が破損・劣化しており、複写できません」という残念なメールが届いてし...
2024.03.06 08:46タゴール詩集から難産だった本の原稿が最近一つ完成した。まだ無事に出版されるかどうかは未定だ。序文に添えようかと思ったけれど(あまりにキザなので)断念した詩を紹介したい。大昔にこれを読んだときは「事物の仙境」(フェアリーランド)という言葉に痺れた。「私は毎日通いなれた道を…」(山室静訳『タゴール詩...
2024.03.05 02:48外国人の名前小林秀雄は A. Rimbaud を一貫してランボオと書き,他の訳者(堀口,宇佐美,中地など)のランボーと一線を画していたが,友人だった中原中也と共に少数派である。ところが,ネット上では「ランボー」と書くとスタローンの映画が出てきて「ランボオ」にしないと詩人に辿りつかず,逆転して...
2023.10.25 09:00離散版コワレフスキーの独楽以前から折に触れて考えていた「時間離散版の Kowalevski 独楽」についての論文が,日本物理学会の欧文誌(JPSJ)に採択され,現在オンライン公開されている。そちらは期限付きと思われるので,内容はほとんど同じ元原稿の pdf をここの arXiv に上げておいた。少し前に本...
2023.08.15 21:36「ある定積分公式について2」執筆原稿「ある定積分公式について2」を校了した。早速 arXiv の原稿欄に追加しようとしたら,原因不明の挙動でハネられる。サイトを始めて数年いろいろ理不尽なこともあったが,無料ユーザーなので「自力解決」するしかない。あれこれ考えた末,新しく Manuscripts 項を設けて原稿類...
2023.05.23 06:522種類の独楽写真のコマは大昔に秩父の土産物屋で買ったもので,右は「眠り独楽」左は「逆立ち独楽」である。両者はよく似た形=球形をしているけれど「底に突起があるかないか」が異なり,回したときの動作が全く別物になる。眠り独楽は直立して静かに回るので,変化に乏しくて面白くないと思うひとが多いかもしれ...
2023.05.09 22:44渡邊慧先生のこと先日ある会合で,物理学者渡邊慧(1910--1993)の「パターン認識論」を発展させた論文で学位を得たという数学者に会って,大いに刺激を受けた。渡邊先生の著作で読みやすいものには『認識とパタン』(岩波新書)や『知るということ:認識学序説』(ちくま学芸文庫)がある。他に『時』(河出...
2023.03.31 01:05平衡状態への緩和約10年振りに MD(分子動力学)計算をやってみた。同じ運動量を持ち方向がランダムな状態(明らかな非平衡状態)の気体分子系が,相互作用によって平衡状態へ緩和する様子を調べたくなったのだ。プログラム自体は昔のものを使い回せば良いのだが,すっかり忘れているので「書き換え」に思わず手間...
2023.02.06 08:23ボーア兄弟雑誌「数学セミナー」の記事をまとめたムック本の一つ『現代数学のあゆみ』(1990年)に載った鹿野健「英国学派の数論」を改めて読んでいて面白い間違いに気付いた。数学者ハラルト・ボーアとして(間違って)兄の物理学者ニールス・ボーアの写真が載っているのだ。左が記事の写真,中央はネットに...
2023.01.31 13:28大山 vs 升田の高野山決戦現在藤井 vs 羽生の王将戦の真っ最中で3局目まで先手番の勝利が続いている。将棋はからきし弱いのだが『ゼロからの力学』(岩波)では将棋の盤面を載せるという遊びをさせてもらった。手許にあった大山名人の本から適当に選んだ場面を使ったのだ。大山 vs 升田の高野山決戦なのだが何局目だっ...
2023.01.11 06:334種の「バガヴァッドギーター」写真は手許にある4つの『バガヴァッドギーター』本で,右から入手の新しい順に並べてみた。右端が佐藤裕之訳の新刊で,一番取っ付きやすそうにみえる。次が岩波文庫の上村勝彦訳で,一番学問的だ(何しろ訳注が半分を占める)。ご存知のように「ギーター」は浩瀚な叙事詩『マハーバーラタ』の中の一挿...