ラテン語
160年前のある数学者の論文(ラテン語で書かれた18ページ)とひと月近く格闘していた。そのためもあって,以前に少し読んで放っておいた小林標「ラテン語の世界」を引っ張り出して読んだり(この本はお薦めである),研究社の「羅和辞典」の中古を注文したりまでした。
しかし辞典が届くまで我慢できずに,論文の式(幸いに書式は今と同じ)から論旨を想像しながら(これを Guess Work という)計算のフォローを試みたところ,細かいところまで意外に理解できてしまった:正しく理解したと思う根拠は誤植も発見できたからである。なお,文法を知らなければ単語を調べるだけでは訳せないこともよくわかった。なるほど高瀬正仁さんの大変さが理解できる。
そんなわけで,この論文に関してはラテン語が読めなくても目的を達成できた。これに力を得て以前からの計画を試みていたところ,昨日になって類似の Guess Work が成功し懸案の問題が解決した。具体的な解が得られたことで,周辺の各種疑問も解消し,これにより「戸田先生に満足頂ける解答」が得られたように思う。これで論文の「ネタ」がひとつできたのである。
さて,この結果として「ラテン語熱」のほうは急速に冷めてしまった。問題の論文を和訳するのも大変だし,当面ラテン語学習に復帰することはないだろう:特に読みたいものも他にはないので。もっとも,前述の小林本の後,エラスムス「痴愚神礼讃」の渡辺訳と沓掛訳を読み比べたのはそれなりに楽しかった。世界の名著にある「対話集」もおもしろく,あれの未訳部分を原典で読んでみたい気もするが,少し趣味に走り過ぎであろう。それにしてもエラスムスは偉い。
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