プランクの長さ

プランク長やプランク質量といったいわゆる「自然単位」は,名前の通りプランクが始めたのだがその原論文については最近まで知らなかった。「非可逆的な輻射現象について」と題する Annalen der Physik 1 (1900) 69-122 の論文がそれで「プランクの熱輻射公式」以前の仕事だ。ちなみにプランクの公式はドイツ物理学会の会報に載ったもの (1900/10/7 例会) が最初である。対してこちらは「1989/11/7 受理」とあるので出版まで1年以上掛かったようだ。

内容は熱輻射についてエントロピーの観点から議論するもので,もちろんボース統計に基づいていないから正解には至っていない。しかし議論されているウィーンの式には既に「プランク定数」に当たるものが定数「b」として登場する。そして最後の節で余談的にこれと光速度「c」および重力定数「f」を使うと次元を持つ定数が構成できるとして,プランク長・プランク質量・プランク時間などの式と数値が書かれている:単位系が cgs だが,それぞれ現在の記法で b=h, c=c, f=G に対応していることがわかる。なお論文には定数「a」も登場するが,これは a=h/k(k = ボルツマン定数)である。

これらの重要性が再認識されたのは,歴史的にはロシアのブロンシュタイン(学位論文 1935)が最初らしい。スターリンに粛清された物理学者 M. Bronstein についても最近知ったのであるが,これについては機会があれば改めて書きたい。

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