ブルバキ「数学原論」

私が大学に入学する数年前から表題書籍の日本語版が東京図書から刊行され始めた。当時在学中の高校図書室にそれがあったかどうか記憶にない。記憶にあるのはスミルノフ「高等数学教程」全12巻があったことだ。ちなみに「高等」とは「高等学校用」の意味でないことは中を覗いてすぐにわかった(笑)。ブルバキを知ったのは大学に入学してからだが,図書館で現物に接して面食らったのは言うまでもない。森毅先生のエッセーも読んだけれど「物理志望の私が読むものではない」と当時は判断した。まあそれで良かったとは思うが,それでも「実一変数関数論1&2」をその頃に購入した。スミルノフの「変分法・積分方程式」巻を買ったのは少し経ってからだった。ちなみに「実一変数本」は,大学院生になってからS先生の宿題を解くのに役に立って共著論文に結実した。


そういうわけで「数学原論」は意図的に遠ざけていて,私の書架にあるものは上記の2冊だけというのが十年くらい前までの状況であった。大学奉職後は図書館にあったので私蔵する必要がなかったということもある。それでも,中に含まれた歴史覚え書きを集めた「ブルバキ数学史」は面白いので一冊に纏められたものをたまに読んでいる;これは現在ちくま学芸文庫から出ている。なお今では「リー群・リー環」3巻が書架に仲間入りしている。


「数学原論」は現在絶版状態だが,古書で全巻を揃えるには10万円ほどで足りるらしい。私の場合,お金が惜しい&不要&場所を取るという理由でその気は全くないけれど,揃えている数学者・数学愛好家はどれほどいるのだろう? むかし何かの折に開高健夫人の牧羊子さんが,趣味で「原論」を持っているという話をされたが,全巻揃っていたのかどうか聞かず仕舞いだ;夫人は奈良女の化学科出身で阪大の伏見研のセミナーにも出ていたそうで無類の数学好きであった。




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