数学者 佐藤幹夫先生のこと

昨日「数学セミナー」10月号の予告を見て,佐藤幹夫先生が今年始め(1月9日)亡くなられたことを知った(享年94歳)。今頃になって知るとは迂闊な話だが,最近は新聞やテレビもあまり見ないし,退職するとニュースが入り難くなるようだ。

大学院生の頃に中大理工で犬井鉄郎先生の「物理数学」の演習をお手伝いしていた。ある授業の後で先生が「これから本郷の数学教室で佐藤さんの話があるのだけど一緒に行きませんか」と言われる。渡りに船で本郷までタクシーに便乗して講義を聴いた。じつはこれが「佐藤節」を聴いた最初であった。その講義は「超局所解析」の話で,イジングやソリトンの佐藤理論が生まれる少し前に当たり,当時は佐藤先生が自分の研究に関係して来るとは予想もしていなかった。

佐藤先生の講義録『ソリトン方程式と普遍グラスマン多様体』は出てすぐに購入したが,有名な『佐藤幹夫講義録1984-1985』は時期を失して持っていない。あるとき神保町の明倫館で見掛けたが,価格「1万5千円」に尻込みしてしまった。その数年後に京大の数理解析研サイトに PDF があるのを見付け「こうでなくては」と喜び入手した。『最終講義』の PDF も同じところにあり,こちらはたいへん面白いのでお勧めしたい。リーマン予想やモジュラー関数は「敬して遠ざけ」ていたのだが読後に敷居が少し低くなった。遅ればせながらご冥福をお祈りしたい。

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