数学者カタランのこと

ウィキペディアによると E.C.カタラン(1814-1894)はフランス&ベルギーの数学者で連分数・幾何学・数論・組み合わせ論の研究者だという。国籍が2つある事情はわからないが,なんだか名探偵ポワロ氏を思わせる。拙著『微分積分演習』の Tips の材料を探していたとき,当時の同僚 M 先生に教わって「カタラン数列」を入れたのは懐かしい思い出だ。同先生からは他にも『熱力学と統計力学』の演習問題として金融工学の問題を頂いた。

カタランの名前を冠するものは他にも色々ある。ある定積分値としての「カタラン定数」は私も知っていたが,その数 G=0.91596559... は(オイラー定数に似て)他にも色々な表示式を持つ不思議な数だ。また「カタラン予想:不定方程式 x^a-y^b=1 の自然数解は 3^2-2^3=1 以外にない」は,今世紀になって初めて肯定的に解かれたそうだ。

今回初めて知ったのは「カタラン立体」という名称だ。「プラトン立体」とか「アルキメデス立体」と呼ばれる多面体は有名だが,その人名に根拠はなく「箔を付けた」だけの意味しかない。凸多面体の特徴付けと分類から得られた「カタラン立体」は結果的に後者とほぼ同等のものである。例えば,下の左側は前者の一つ「正十二面体(dodecahedron, ドデカへドロン)である。対して右側は同じく十二面を持つが対称性が異なり「菱形十二面体(rhombic dodecahedron, ロンビックドデカへドロン)」と呼ばれ,分類的には後者の一つである。ちなみに,これらのパズルは市販されているが,一度崩すと私には元に戻せそうにない。

右側に類似した「菱形三十面体」というのもあるそうで,菱形の「縦横比」が異なるという。大昔に「正二十面体(icosahedron, イコサへドロン)」の模型を厚紙で作ったことがあって今でも自室にぶら下げてあるのだが,今度はこの三十面体を作りたくなっている。

追記(12/28)「プラトン立体」の由来は『ティマイオス』にこれら正多面体が言及されていることによるそうだが,発見はもちろんプラトンよりもっと以前であっただろう。他に「無理数」に言及している対話篇もあったと思う。『ティマイオス』はハイゼンベルク『部分と全体』にも登場するが,光瀬龍『百億の昼と千億の夜』のアトランティスへの言及のほうが私には馴染みだ。




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