エルゼヴィア; Elzevir or Elsevier ?

エルゼヴィアは西欧ではシュプリンガーと並ぶ学術雑誌を手掛ける大手商業出版社で,少し前から両者とも大学系や学会系の弱小雑誌を取り込んでますます大きくなっている。日本物理学会にも過去に打診があったと聞くが「編集業務は残して出版の一切を任せる」という見掛け上は魅力的な誘いをなぜ断ったのか想像してほしい。実際,寡占状態の弊害で雑誌価格の高騰を招いているのは,読者&著者の立場からしても大問題だ。私は正しい選択だったと思うが,痩せ細り続ける政府補助金に頼りながら,日本物理学会は今もイバラの道を歩んでいる。

ここで書きたいのはしかしそのことではなくて,エルゼヴィアに関する私自身の誤解のことだ。どこに書いたか忘れたが「エルゼヴィアはガリレイの本も出している」という趣旨のことを書いたことがある。ところが最近,有田正規『学術出版の来た道』を読んで,ガリレイ本『二つの新科学対話』を出した Elzevir は18世紀初めに廃業しており,現在の Elsevier は19世紀末に名前をパクった別会社だということを知った。まんまと後続者の目論見にはまっていたわけだ。あまり「由緒」をありがたがるものではないと反省している。

ところで『学術出版の来た道』はこれで初めて知ることも多くお勧めしたい最近の良書の一つである。


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