横着すると危険なときがある

昨日フロベニウスの論文(独語)の数式部分を眺めていて頭が混乱してしまった。良い教訓と思うので紹介したい。

そこには |A, B|=-|B, A|≡|A, B| とあった。少し前にある定義から |A, B| が反対称であること(A, B の交換で符号が変わる)はすぐにわかるので最初の等号は簡単なのだが,次の等号に面食らったわけである。飛ばして少し先まで読むと,よくわかる式と意味不明な式が交互に出てくる始末だ。

一晩寝た後に改めてドイツ語本文も含めて読み直したところ「モヤモヤ」が氷解した。記号 ≡ はただの等号ではなく「2を法とした合同」の意味だった。式 A, B は整数の組から成るので数式の値は偶数か奇数のどちらかになる。よって,例えば「-C≡C」という式は任意の整数 C について正しい等式になる。合同式は (mod 2) などと付記されるのが普通で,そうなっていれば混乱しなかっただろう。私の場合,=, ≡, := などをあまり区別せず,そのときの気分で使っていたことの「報い」だとも言える。

これまで,本文などは読まず数式だけを追うという「横着」を習慣にしてきた;分からなくなったときに初めて本文を読むのである。自分でも悪くない習慣だと思うのだが,たまにこういう落とし穴があるので注意が必要だ。フロベニウスは抽象的形式感覚に優れた代数学者(大数学者)という印象だが,少し好きになってきた。

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