ヴェイユ兄妹のこと

数学者の兄アンドレのほうはこのブログで何度か話題にしたことがあり,著書もいくつかを購入し&読み&役立っている。さて,例によって国会図書館サイトで検索を掛けてみると,兄の8件に対して妹のシモーヌは40件がヒットし,如何にシモーヌ・ヴェイユがポピュラーかを物語っている。ちなみに妹の表記は「ヴェーユ vs ヴェイユ」の2派があるようだ。


兄の8件のうちで自由に読めるのは2つのみで「自伝」と「妹シモーヌの思い出」である(日本語訳のある兄の本はもっとあるのだが)。後者は BBC のインタビュー記事で,前者の序文で存在は知っていたが今回初めて読むことができた。私の場合,妹シモーヌの著作は大昔に「重力と恩寵」を読んだくらいで,これまで真面目に読んで来なかった。彼女を「聖女」のように扱う風潮に違和感があったからでもあるが,兄の思い出からは「辛辣でユーモラスでリアリストな性格」が伺えて「さもありなん」と意を強くした。


今回の検索でシモーヌ・ヴェイユの著作の多くがコレクションに入っていることを知った。大きい所では5巻の「著作集(旧版)」と4巻の「カイエ」があり,早速に数時間を掛けて自家製の「全集PDF」を作ってしまった(笑)。面白い発見は,ノルマリアンの頃に書いたらしい「詩集」があり,ヴァレリーの手紙が付いていたことだ;無謀にも詩人に批評をお願いしたようだ。詩人繋がりでさらに言えば,著作集の1つにはエリオットが序文を書いている:もちろんカトリックの立場からの批評を期待されてのことである。


奇しくも今日8月24日はシモーヌの命日であるらしい。「重力と恩寵」は,パスカル「パンセ」やニーチェ「悦ばしき知識」に似た箴言集であったが(「カイエ」はその元ネタ帖である)シモーヌがどこかで「ニーチェは嫌い」と書いているのを見付けて笑ってしまった。今後は世評を気にせず 作成したPDF全集を読んでいきたい。


(追記 Aug.26) 兄による「妹の思い出」は,正確には少なくとも2種類ある。1つは「自伝」の序文にあるように「詳伝シモーヌ・ヴェイユ I, II(勁草書房)」の著者 S.ペトルマンに彼が語ったもので,その内容は「詳伝」の記述に組み込まれている。ちなみに,この「詳伝」は I のみが現在自由に読める。もう1つは C.ダルヴィの「シモーヌ・ヴェイユ(春秋社)」に含まれた「思い出」であり,今回私が読んだものである。この本はBBC 映像の文書版らしく,翻訳にあたり吉本隆明へのインタビューなどが付加されている。


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