建部賢弘の「反背冪の公式」
以前にある雑誌のために書いたものの「ボツ」になった拙稿を思い出し arXiv に掲載した。原稿「建部賢弘の反背冪の公式」がそれである。そこに挙げた第1証明は Boros-Moll の "Irresistible Integrals" にあるものだが,その証明の欠陥に気付いてひねり出したのが続く第2証明で,それが当時の原稿執筆動機であった。
ところで,この書名の irresistible(抵抗できない)は言い得て妙な形容で,(前回も書いたが)私の場合も定積分や行列式を見ると「計算せずにはいられない心理状態」に陥ることがしばしばなのだ。
この ir は irreversible や irrelevant,irresponsible などの印象的な英単語に使われ,後続を否定するための接頭辞である。統計物理学出身としては,特に最初の irreversible が irreversible process でなじみなのだが,これの日本語訳に不可逆過程と非可逆過程の2つあるのがいつも悩ましく感じてきた。超伝導と超電導もそうだが,どちらが多いのか統計分布を調べて欲しい気がする。後者について私は断然「超伝導」派であるが,前者については「不可逆」の方が少し発音しやすいとは思うが,どちらにすべきか決めかねている。
0コメント