Vicimus GEGAN

ガウスの「数学日記」はラテン語で書かれているのだが,クラインがそれをドイツ語に翻訳した論文があることを前回記事で書いた。その後「日記本体」も見付けて pdf をダウンロードした。表紙を含めて61ページからなり,日記自身はそのうち27ページを占め,残りは白紙や計算に使われている。

前回記事で「本文があまりに簡潔」と形容したが「ほとんど暗号」に近く,いまだに意味不明なものが多いという。その最たるものが写真の「第43項」だ。なお,通し番号は付いておらず,全部で146項あり一部には印(*など)が付してある。たった1行「Vicimus GEGAN」とだけ書かれ,日付と場所が書いてある。冒頭の vicimus は有名なシーザー(カエサル)の「来た,見た,勝った(veni, vidi, vici あるいは venimus, vidimus, vicimus)」の3番目と同じで「勝利した=征服した」という意味である。わからないのは「GEGAN」で,これが何を意味するかについて諸説あるらしい。あたかも「数学日記学=Tagebuchology」という分野があるかのようだ。

有力なのは Wiermann (1997) の説で「算術幾何平均」と関係しているという。しかしながら,算術幾何平均については他にもいくつかの項目がそれに言及しているので,説得力に欠けるのではないかと私は思う。オリジナルの数学日記を眺めて気付いたのは,表紙裏のページにも「GEGAN, WAEGEGAN」という記入があることだ。後者も含めて「謎解き」されるならば喜ばしい。ガウスの「秘密主義」とはよく言われるが,誰が見るでもない日記を暗号で書くとは人騒がせな性格ではある。私だったら後から見て「何のことだったか」わからなくなるに違いない(笑)。

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